原点
ツェッペリンのニュー・アルバムが、初めてスタジオでの冒険に飛び立った時点に回帰した
作品になることははっきりしていた。
一番明確な共通点が、ともに異常なまでの緊張感のなか短期間でレコーディングされた
ことだったが、リリース後のペイジは語っている。
思うに「プレゼンス」はえらく過小評価されたアルバムだった。
あれは純粋に熱意と気持ちだけで作られいる、というのは二度とあんなプレイができるか
どうか僕らにも判らないってことだ。
プラントに最悪の事態が起こっていたら中身もぜんぜん違ったものになったかもしれない。
ストレートに気持ちを込めるという点では「プレゼンス」が一番だと思う。
スタジオはメンバーが宿泊していたホテルの地価にあり、彼らは時間に縛られることなく
レコーディングに打ち込んだ。
ツェッペリンは幸運にもストーンズが新作を録音すべくやってくる前の2週間ほどの空きを
抑えることが出来たのである。
ひとたびセッションが始まると寝食忘れてレコーディングし、一番の充実感を感じた作品
だという。
後年、ペイジはさらに、
切羽詰っていたというか、みんな鬱憤が溜まっていたんだろう。
バンドは休養充分だったし、リハーサルからむんむんするくらいの熱気だった。
プラントの件も含めてこの先どうなるだろう、って感じだったから全員がそういう気持ちを
うまく音楽に引っ張り込んだんだ。
まだ足首に体重をかけられなかったプラントは、しかたなく車椅子に座ったままヴォーカル
をレコーディングした。
ペイジは中でもアルバムの冒頭を飾る「アキレス最後の戦い」にえらく満足感を覚えた。
「天国への階段」の時と同じくギターは全部僕一人でやった。
あれ以来ギターをうまく重ねてハモらせるやり方をあれこれ考えてて、「PHYSICAL~」
の「テン・イヤーズ・ゴーン」はその発展形だし、「アキレス~」も本質的にその流れを
汲んでいる、というのもあの時は全然考えてるヒマがなくて最初のトラックが完了する
とすぐに次のパートに入るって感じだったんだ。
「プレゼンス」の仕事はめちゃくちゃ速かった、たまたま頭がうまく回ってくれたんだろう。
僕はあのアルバムのギターにすごく満足している。
たしかに不安定な時期だったし、全員の不安感がはっきり出てるけど「アキレス~」の
ソロは「天国への階段」のソロにも匹敵すると思う。
僕にとってはそれくらい高いレベルに位置してるんだ。
1990年にボックス・セットのリマスターを手がけた際にも、
圧倒的なサウンドだよ、なのにこの曲を見過ごしている人がどれだけいることか。
「プレゼンス」はバカ売れしたアルバムじゃないけど、僕が聞いた範囲ではけっこう
評判だったみたい。
けど、それまでのアルバムに比べると、売上はさほどじゃなかったんだ。
脅威のレコーディングとミキシングを完了したバンドは再び税金の心配のない友好的
なジャージー島に降り立った。
12月10日には地元のパブで350人の住人を前にお気に入りの古いナンバーを何曲
か披露したが、これが見逃せないライヴとなっている。
というのもプラントが椅子に座ったまま歌ったのである。
明けて1976年、キッダーミンスターの農家に戻ったプラントは事故以来初めて自力
で歩いた。
一人の人間にとっては小さな一歩だが、マディソン・スクエア・ガーデンで6回公演
をやるためには大きな一歩である。
-ロバート・プラント-
驚くべきことに「プレゼンス」は英国のレコード業界史上最も予約注文を稼いだもの
となり、ビートルズをはじめいかなるバンドも成し得なかったチャート初登場1位と
いう大記録を達成した。
ツェッペリンの基準からしてもこれは並々ならぬ偉業だったが、結局このアルバム
は前作、前々作のようなプラチナ・アルバムにはなれなかった。
しかし立ち上がりのよさは、いくらか迷いを見せ始めていたバンドを大きく元気付け
たのだった。
9月にはペイジとボンゾの二人が短期間モントルーに向かい「全部がパーカッション
の曲」を完成させた。
ペイジは「この曲が次のアルバムに収録されるのは間違いない」と語っていたが、
現実には1982年に「CODA」の収録されるまで日の目を見なかった。
(賢明な方はなんという曲なのかわかると思いますがw)
スイスから戻ったペイジはそのキャリア中、もっとも厄介な問題、映像作家のケネス
・アンガーとのいざこざに遭遇することになる。
(この問題書き出すとまた長くなっちゃうので端折ります、すいませんw)
個人的な苛立ちはよそに、メンバー達は特殊なプロジェクトの完了を目前にしていた。
1976年、ツェッペリンは一切のライヴを行わないがその代わりになる大作、世界一
ダイナミックなロック・バンドの活動を収めた長編映画が公開されることになる。
私生活でのごたごたも、この壮大なプロジェクトの妨げにはならなかった。
(つづくw)
【この期間には】
プラントの事故もさることながら、ペイジの身辺にもいろいろごたごたがあったんですw
ドラッグの問題、ケネス・アンガーとの問題、それに女性問題(爆)
まあ、女性問題については落ち着くところに落ち着いたわけですが・・・・・
by shika_monologue | 2005-09-21 00:06 | 鉛の飛行船の話 | Comments(2)