(3) 既視感

アパートに戻ると、階段の下に猫がいた。


最近よく見かける、茶トラ模様の猫だ。

ちょっと薄汚れてるんで、この近くに住みついた野良だろう。

その割には人を怖がらないので、もともとはどこかで飼われてたのかもしれない。

この階段の下はお気に入りのようで、晴れた日には決まってここにいる。

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最初はこちらから近づいても少し距離をおいていたが、今は隣に腰掛けても逃げることはない。

ちらっとコチラをうかがったあと、また気持ちよさそうに日向ぼっこを続けていた。


『お前は気楽そうでいいねぇ』

『・・・・・』

『どっから来たんだよ?』

『・・・・・』

『・・・・・』

『・・・・・』

『なんか言ってくれよ、お前も一人ぼっちなんだろ?』


・・・ウルサイナァ


『えっ』

『・・・・・』

『今の、お前なのか?』

『・・・・・』

『んなわけないよなぁ。。』


自分自身に半ば呆れながら、階段を上がる。

部屋に戻ってベッドに腰を下ろすと、留守電のランプが点いているのに気付いた。


珍しいな・・・


再生してみると、実家からだった。

電話が掛ってくることなんて滅多にない。

ほんの少し不安を覚えながらも折り返し掛けてみると、心配したより明るい声で母親が出た。


『もしもし』

『ああ、俺だけど・・・どうした?』

『うん、別に用事があったわけじゃないんだけど・・・今日は仕事は休みかい?』

『なんだよ、急に息子の声が聴きたくなったとか言うなよ』

『ははは、いいじゃないか、そっちからは全然連絡してこないんだから』

『まあね、しょっちゅう電話してくる息子なんて気持ち悪いだけだろ』

『そりゃそうだけど私ももう年だからね、ちょっとは心配してもバチはあたらないよ』

『兄貴となんかあったの?』

『いいや、そんなんじゃないから・・・お前ももうじき50だろ、体は大丈夫なのかい?』

『ああ、いたって健康だよ・・・まあ今日はちょっと風邪気味みたいだけどね』

『どうせいいもん食べてないんだろ、こっちで採れた野菜、少し送っといたからさ』

『お、そりゃ嬉しいね、こっちじゃ野菜も高くてね』

『いつまでも若いつもりでいるんじゃないよ、そろそろガタがくるんだから』

『こっちのセリフだよ』


他愛のない会話をしながらも、こうして心配してくれる親がいることは有難い。

母親ももう80近いが、ともすれば私より元気かもしれないと思うことがある。

若いころから畑に出ていたから、体が丈夫にできているんだろう。


『じゃあね、たまにはそっちから掛けておいでよ』

『わかったわかった、お袋もあんまり無理すんなよ』


電話を切りベッドに横になった。

なんだか体がダルい。


こりゃ本格的に風邪かな?


とぼんやり考えていると、いつのまにかウトウトと居眠りをしてしまった。


気がつくと、陽がだいぶ西に傾いている。

3時間ほど眠っていたようだ。

そういえば最近、たまに昼間でも眠くなることがある。


『風邪のせいばかりじゃないか・・・』


独り言を言いながら寝ぼけ眼で冷蔵庫を開けると、お茶が切れていたことに気付いた。

おかずもないし、ついでにコンビニで何か買ってこようと家を出る。


近所のコンビニでは、ちょうど入荷したばかりの商品を並べているところだった。

ちょっとした幸運に喜びながらお茶と出来合いのおかず、それに珍しくスイーツを買う。

疲れているからか、体が甘いものを求めているような気がした。

おかげで少し重くなった荷物を提げて、早々に家路に着く。


そして・・・アパートに戻ると、階段の下に猫がいた。




・・・続く
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by shika_monologue | 2013-04-02 16:37 | この物語はフィクションです。 | Comments(4)

Commented by ひま at 2013-04-02 21:49 x
続きっ♪続きっ♪
早くっ♪早くっ♪
Commented by 鹿さん at 2013-04-02 23:15 x
これこれ・・・急かすでない・・(^^ゞ
Commented by のぐち at 2013-04-09 13:44 x
なにか…ずっと違和感が続いてる気が…

そんな想いを抱きながら、第一話から読んでますが…
この先、どう展開していくんだろう!?
オチは??
もう喫茶店には戻らないのかな??

シチュエーション的に、某氏ブログのこの先予定の長編や短編と同じ部分が有ったり(笑)、個人的に気になる行方も。。。^^;
Commented by 鹿さん at 2013-04-09 19:06 x
たぶん最後まで『違和感』は続くかと・・・(^^ゞ
どーやってその原因まで繋げていこうか、もがいてます。。
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