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怪異 Part.2

1976年10月19日、待望のムーヴィー「永遠の詩」のワールド・プレミアが行われた。
同時に2枚組のサウンド・トラックもスワンソングからリリースされ、このアルバムは
米国で出荷と同時にプラチナを獲得、11月半ばには英国でもチャート首位に輝いて
いる。

しかし、撮影から3年という期間があったせいかメンバーはこの映画について語る
とき、いつも遠慮がちだった。

ペイジも・・・

 現実に映画で使われたギグについて言うと、飛びぬけていいわけでもなかったが
 飛びぬけて悪いわけでもない。
 魔法みたいな一夜じゃなかったのは確かさ、でも悲劇的な一夜でもなかったんだ。


永遠の詩」を一目見ようと世界中のファンが映画館に通う中、メンバーはロンドン
郊外の古い映画館(エマーソン・レイク&パーマー所有)で精力的なリハーサルを
開始していた。
プラントの足首の傷もこの頃にはすっかり癒えて、11回目の北米ツアーがスタート
し、夏の終わりには英国でも公演が予定されていると、大々的に発表された。
が、プラントが扁桃腺を患ってしまったため延期となり、エイプリル・フールのダラス
から幕を開けた。

3月末に待望のステージに向けて始動したメンバーは、しかし2年ぶりとあって
それぞれナーヴァスになっていた。
特にプラントは、

 プレイ自体にはまったく心配はなかった。
 ただ気がかりだったのは足を負傷したままで好きに動けるかってこと。
 最初の2、3回はひとつひとつの動きを確かめながらって感じだった。
 でもステージへの階段を昇っていくうちにそういう不安や嫌な感じはなくなって
 興奮が取って代わっていった。
 「ああ、なんて久しぶりなんだろう!」って・・・あそこに戻れたのがとにかく嬉し
 くてたまらなかったんだ。


もうひとつ、バンドにとって問題だったのが新曲がなかったことだった。
毎回、新曲を敢えてレパートリーに組み込むことで誇り高いリスクを冒してきた
彼らも今回は「過去の栄光」にすがるしかなかったのである。
それでも観客はツェッペリンが復活しただけで大満足だったが、彼らは「新たな
栄光」の欠如を快く思っていなかった。

 最初のうちはステージ上で大丈夫だろうか?って顔を見合わせたりもした。
 でも徐々に調子よくなってきて・・・
 単に昔の焼き直しじゃなくて、もう一段上のレヴェルに達していたんだ。

確かにツアーを開始する前から周囲では懸念する声があがっていた。
本来、あらゆる面で士気を高めていく立場にあったグラントでさえ、妻が自分の
農場で働く農夫と駆け落ちしてしまったせいですっかり落ち込んでしまっていた
し、ペイジの万全の体調とは言えずバンドの周辺にはヘロインが蔓延していた。

当のペイジはこう語っている。

 安全策なんて取りたくない。
 ギリギリの崖っぷち・・・そんなふうに生きたい。
 羊として千年生きるより、獅子として一日生きたいんだ。


バンドはレパートリーから「幻惑されて」を外していたが、友人によるとペイジ
ライフスタイルにおいてはこの曲は相変わらず不可欠の要素となっていた。
ペイジは前々からカイロにあるクロウリーペイジのオカルトの師匠と言われる
人物)の旧宅を訪れたいと言っていたが、ツアーが2週間の休憩となったのを
機に、いよいよそれを実行することにした。

リッチー・ヨークはその報せに悪い予感がした。
彼は過去にジミ・ヘンドリックスと語る機会があったが、そのときもジミは米国
からエジプトに向かうところだった。
そして、それがジミ最後のインダヴューとなったからである。
しかしそれは不要な心配であったようで、ペイジは無事エジプトから帰還して
いる。


その後もいろんな問題がありながら、それでも成功を収めていたツアーだが
ニューオーリンズに飛んだプラントのもとに英国にいる妻のモーリーンから連絡
が入っていると知らされた。

2時間後、彼は5歳になる息子の死という報せとともに再び姿を現した。
7月26日、息子のカラックは突然ウィルス性の呼吸障害に襲われ、翌朝には
さらに容態が悪化、病院に到着する前に死亡してしまったという。

立ち直れないほどのショックを受けたプラントは、妻と合流すべくボンゾと共に
英国に向かった。
空港で彼を出迎えた父親はマスコミに語った。

 成功も名声もいかばかりのものだろうか?
 家族の愛に比べれば、ほとんどなんの意味も持たないのだ。

                                    (つづくw)


【というわけで】
事故に続き、プラントを襲った悲劇・・・この後しばらくは彼らはまた公演を全て
キャンセルして喪に服すことになっちゃいました。

by shika_monologue | 2005-09-28 02:31 | 鉛の飛行船の話 | Comments(1)

Commented by kawamu at 2005-09-28 14:10 x
またまた勉強になりました(^o^;
しかし、そんな悲劇があったとは...
5歳で子供なくしたら、つらいだろうな~
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